ディノアゴラ
恐竜、古生物にまつわる諸々その他

国際シンポジウムに行ってきました

講演会場国際シンポジウム「海に還った四肢動物研究の最前線」に行ってきました。これは、国立科学博物館で6月13日まで開催される"Fifth Conference on Secondary Adaptation of Tetrapods to Life in Water"の一部をなしているもので、一般人にも公開されたものです。本当は全日程出席したいところですが、一般社会人が平日1週間休みには相当準備と勇気が要る。とはいえ、今日だけでも結構濃い内容でした。

朝から上野公園には警察の警備車両。昨日の秋葉原の事件の影響かと、ものものしさを感じながら科博日本館の会場へ。ここで講演を聴くのは何年ぶりだろう。
午前中の講演3本は、鯨類の起源と進化、それに現生の新種ツノシマクジラの記載に関する講演。各40分程度に質問時間がつく。Thewissenの講演で、およそ5千万年前から最初の1千万年間に陸生から完全な水生適応までずいぶん変化したものと思った。35百万年前に古鯨類から新鯨類への進化。ヒゲクジラとハクジラの分散など、フォーダイスの講演であらためて鯨類の辿った進化の道筋を考えさせられた。ツノシマクジラについては、この時代、あんなに大きい生き物で新種発見という驚きがまず一つ、一方でニタリクジラはネオタイプが求められることも知った。
 お昼、外に出ると隣の学士院に黒塗りの車が。菊のご紋章の旗がついている。陛下だ。あとで見ると、学士院賞の授賞式だった。古生物分野で学士院会員になった方っているのだろうか。
 午後は爬虫類の水生適応について。まず、真鍋真先生が総論的に爬虫類・鳥類進化における水生適応について講演。科博地球館地下2階の展示標本の紹介やショニサウルス・シカニエンシス頭部発掘の現場写真も交えて解説。
 続く2つの講演は、鰭竜類(Sauropterygia) に関するもの。佐藤たまき氏は首長竜の多様性について。以前はクビの長短で系統を分けていたが、クビの長さは段階的に異なり、O'keefe2001以降、クビの短い首長竜の多系統が判ったが、首長竜類では先祖がえりや収斂が多く、系統樹の信頼性が高くなくなってしまうという説明などをした。さらに、自分の最新の研究としてYunguisaurus属の最も完全な骨格の研究なども紹介した。
シャオチュン・ウー氏は鰭竜類の繁殖パターンと題して講演。主に鰭竜類の千椎骨と骨盤の結合について説明。鰭竜類はこの結合が弱く柔軟性があった。この柔軟性は水生の爬虫類が卵生でなく胎生で子生むのにかえって好都合だったと説明した。
休憩後あと2つの講演
藻谷亮介氏の講演「魚竜類の体形進化と古環境の変遷との対応について」は、数々の数理解析を通してスケールの大きなはなしを実証的に説明した。最も最初期の魚竜はトカゲにヒレをつけたような体形をしていて泳ぎ方もウナギ型であるが、だんだん魚型さらにその中でもマグロ型に進化した。この体形とヒレの大きさから計算するとどのくらいの速さで泳いだかわかる。(参考)さらにそこから敷衍して代謝レベルも推定できる。次の話として眼についてで、特にオフタルモサウルスは眼が大きいが、このF値や水の透明度などからどのくらい深くまで潜水したかわかること、さらにウナギ型からマグロ型への進化は海退期におこっており、沿岸の浅海が狭まった時期にマグロ型の魚竜が外洋に進出したと考えられると説明した。非常に興味深い話だった。
最後の講演はオリビエ・リーペル氏による「三畳紀海生爬虫類の系統と古生物地理」だったが、これは私にはよくわからなかったので紹介を略します。

講演終了後、地球館地下2階でレセプションが行われ、こんな場所で開けるんだと半ば感心しながら参加しました。
posted at 00:31:38 on 06/10/08 by dinopantheon - Category: 恐竜

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コメント

通りすがり wrote:

これ見に行きたっかったのですが、仕事の都合で諦めました。
うらやましいなぁー。
お台場で始まっている「世界最大の翼竜展」には行かれますか?
06/30/08 21:54:16

dinopantheon wrote:

世界最大の翼竜展は、北九州で一応見てきているので、暇をみてということになります。とりあえず、今週末は仙台の古生物学会です。
07/02/08 21:22:42

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